クオールとビズリーチが中小の薬局の身売りを公募(事業承継関連)
法律情報| 2019.08.08
調剤薬局大手のクオールホールディングスと人材サービスのビズリーチが、身売りしたい薬局の公募を行うという日経新聞の記事がありました(こちら)。
薬局は個人経営の店舗が多く、後継者不在で悩む企業が多いと言われます。そこに目をつけたクオールとビズリーチが、薬局オーナーが専門サイトから匿名で応募して事業の売却を図れるようにするとのことです。
どらくらいの応募があるかは不明ですが、薬局オーナーは、譲渡金額や譲渡手数料を検討するにあたり、事業承継局面特有の以下の事情に留意する必要があります。すなわち、事業承継局面の多くの場合、買手はM&Aに関して慣れているところがありますが、売手はそうでないのがほとんどです。M&Aそのものに対する情報格差が非常に大きいわけです。そのため、価格であったり、条件面で売手にとって不利益なことを受諾していることが見受けられます。
上場企業同士のM&Aの場合は、双方にアドバイザーがつくことで、お互いの利益をきっちり調整します。また、上場企業関連のM&Aでは、その後も売手買手共に市場でM&Aをすることを想定していることから、一定のルールを遵守してM&Aを進めます。しかしながら、事業承継局面でのM&Aでは、売手側にとっては一生に一度のことがほとんどです。逆をいえば、買手と売手が、その後に市場で再度M&Aを行うことはほとんどないと言って良いでしょう。そして、売手側にアドバイザー(ここでは、売手のみから報酬を受けて売手に対してアドバイスする専門家のことを言います)がつくことは稀です。かかる状況で、売手側は、M&A仲介会社が用意した条件、通常から考えると厳しい条件のままサインして後々トラブルになることがあるわけです。
大手企業が事業承継に悩む小規模・零細企業を救うべく、今回のように公募を行うこと自体は、社会的な意義もあり非常に良いことだと思います。とはいえ、公募に申込む側は以上のことに留意して、身売りの条件を決める必要があるといえるでしょう。